液晶ディスプレイのしくみ
2016/12/15
ディスプレイの中でも、もっとも普及している液晶ディスプレイについて、
そのしくみを見ていきましょう。
液晶ディスプレイのしくみ
「ディスプレイ」のおさらい
ディスプレイは、極小の画素を縦横に数百~数千個並べて、映像をつくります。
赤・緑・青の3原色の光の量を調整することでさまざまなカラー画素がつくれます
では、液晶ディスプレイの場合、どのように光の量を調整しているのでしょう?
∗ ここまでの説明がよくわからない場合は、以下の説明をまずご覧ください。
液晶ディスプレイの原理
液晶ディスプレイの原理は、「影絵」と同じです。
液晶ディスプレイは、極小カラーフィルターを通る光量を調整し、カラー画素にしています。
具体的には、バックライトとカラーフィルターの間に「半透明の物」をはさみ、
その「半透明の物」の透明度を変えて光量を調整します。
そして、その透明度を変えられる「半透明の物」こそが、液晶素子なのです。
液晶素子
液晶素子は、電気により透明度を調整できる電子機器です。
液晶素子はバックライトとカラーフィルターの間で光量調整に使われます。
それでは、液晶素子を通る光の量が変わるしくみを見ていきましょう。
偏光(へんこう)とは
光は電磁波の一種です。
光には波としての振れがあります。
振れと同じ方向の隙間なら、光が通れます。
振れと直交する隙間だと、光は通れません。
斜めだと… ちょっとだけ通れます。
この隙間が並んだ板を偏光(へんこう)フィルターと言います。
偏光とは、振れが一方向だけに偏った、変な光のことです。
通常の光は、様々な振れ方向の波が、何重にも重なってできていますが、
この隙間を通した後の光は、隙間と同じ方向にそろった偏光になります。
液晶素子は、このしくみを利用して、光の通る量を調整します。
ただし、液晶素子では偏光フィルターは回しません。
液晶の特性を利用して、光の振れの方を回転させるのです。
液晶の特性
液晶は細長い分子の集まりです。
分子と同じ方向に光を振れさせることができます。
光が進む途中で液晶分子の方向を変えれば、光の振れもねじれます。
液晶分子の方向は、配向膜(はいこうまく)という特殊な薄膜によって変えられます。
これにより、光の振れもねじれます
ところが、電気を通すと、液晶は同じ方向に整列します。
光もねじれずに直進します。
この原理を利用して液晶の透明度を調整します。
1.配向膜と同方向の偏光フィルターを配置します。
2.光が通るよう配向膜を透明にします。
3.すると、ねじれた光が2つの偏光フィルターをすり抜けられるようになります。
偏光フィルターを通り抜けられる光の量が減少します。
5.さらに電気を通すと、まったく光が通りぬけられなくなります。
この構造をコンパクトにしたのが液晶素子です。
液晶素子を画素サイズまで小さくし、並べます。
原色フィルターを重ね、カラー画素を作ります。
このパネルにバックライトをつけて、制御器をつければ液晶ディスプレイの完成です。
ただし、実際の液晶ディスプレイでは、
画素サイズの液晶素子をたくさん作って並べているのではありません。
ディスプレイサイズの液晶パネルを画素サイズまで細かく区分けして、
1つ1つの区分けが、極小の液晶素子と同じになるように作られています。
また、カラーフィルターは、1画素を横に3等分して3色を配置した並びになっています。
まとめると…
1枚の液晶ディスプレイには、極小な画素が数百万個も入っています。
画素そのものは発光せず、バックライトからの光を調整する機能だけをもっています。
画素を通過する光の量は、電気により液晶分子の方向を変化させて調整します。
画素1つ1つで光の量を調整するために、画素1つ1つに、このような液晶素子が付いています。
だから…
液晶ディスプレイは極小液晶素子を持つ画素を数百万個も並べた超精密機器であると言えます。
よって、製造時点から、数個の画素に不具合(ドット抜け)が出てしまうのは避けられません。
有効画素数が多いほど、液晶ディスプレイはよりきめ細かな映像を再現できると言えます。
暗い映像でも、バックライトは常に点灯しているため、バックライトの電力消費量が重要です。
電気によって液晶分子の方向を変えるときの反応速度が悪いと、残像感が目立ちます。